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岡山地方裁判所 昭和49年(ワ)333号 判決 1977年11月02日

原告

高橋鉄太郎

昭和四七年(ワ)第二〇三号事件被告

岡山市農業協同組合

ほか二名

昭和四九年(ワ)第三三三号事件被告

三田稔

主文

一  被告岡機運輸有限会社、同福島成至は各自原告に対し金九一一万〇一六四円およびこのうち金八三一万〇一六四円に対する昭和四七年五月五日から、金八〇万円に対するこの判決言渡しの日の翌日から完済に至るまで年五分の割合による金員の支払いをせよ。

二  原告の被告岡機運輸有限会社、同福島成至に対するその余の各請求、被告岡山市農業協同組合、同三田稔に対する各請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用のうち、被告岡山市農業協同組合、同三田稔について生じた分は全部原告の負担、原告、被告岡機運輸有限会社、被告福島成至について生じた分は、いずれもこれを二分し、その一を原告の、その余を被告岡機運輸有限会社、同福島成至の各負担とする。

四  この判決は、原告が被告岡機運輸有限会社、同福島成至両名のために金九〇万円の担保を供したときは、主文第一項に限り、仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  昭和四七年(ワ)第二〇三号事件

(一)  原告

1 被告らは各自原告に対し金一八九〇万六三九八円およびこれに対する昭和四七年五月五日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

2 訴訟費用は被告らの負担とする。

3 仮執行宣言

(二)  被告岡山市農業協同組合、同岡機運輸有限会社

1 原告の請求を棄却する。

2 訴訟費用は原告の負担とする。

(三)  被告福島

原告の請求を棄却する。

二  昭和四九年(ワ)第三三三号事件

(一)  原告

1 被告は原告に対し金五〇〇万円およびこれに対する昭和四九年七月一八日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

2 訴訟費用は被告の負担とする。

3 仮執行宣言

(二)  被告三田

1 原告の請求を棄却する。

2 訴訟費用は原告の負担とする。

第二当事者の主張

一  原告の請求原因

(一)  事故の発生

1 日時 昭和四六年八月一七日午前九時三五分頃

2 場所 岡山市下石井二丁目六番四六号先道路(以下「本件道路」という。)上

3 加害車 普通貨物自動車(登録番号岡一あ四四―九五)

4 右運転者 被告福島成至

5 態様 本件道路を走行していた加害車の荷台の後部の木枠がはずれて、歩行中の原告の腹部に当つた(以下「本件事故」という。)。

6 傷害の程度 原告は本件事故により前胸部打撲、脾臓破裂、急性腹膜炎、外傷性横隔膜ヘルニヤの傷害を受け、本件事故当日から昭和四六年一〇月一〇日まで岡山市所在の光生病院に入院し、その後も同年一二月二九日まで同病院に通院して治療を受けたが、同病院に入院している間に脾臓摘出手術を受けた。

(二)  帰責事由

1 被告福島

本件事故は、被告福島が加害車の点検を怠つたために発生したものであるから、被告福島は、民法第七〇九条により、原告が本件事故に因つて受けた損害を賠償すべき義務を負つた。

2 被告岡機運輸有限会社(以下「被告会社」という。)

被告会社は加害車を所有していたものであるから、その運行供用者として本件事故による傷害に因つて原告が受けた損害を賠償すべき義務を負つた。

3 被告岡山市農業協同組合(以下「被告組合」という。)

(1)(イ) 昭和四六年八月、被告組合は、その事業部配送センター(岡山市泉田所在)から各支所への貨物の運送を行うため、被告会社との間で専属傭車契約を締結し、加害車は右契約に基いて、被告組合の運送業務に使用されていたものである。

(ロ) 被告組合は、自己の配送計画に基づき、被告会社に対して運送を行う運転手と車両とを指示していたもので、加害車も被告組合の右の指示によつて被告組合の運送業務に使用されていた。

(ハ) 被告組合は、被告会社に前記配送センター内の車庫を貸与し、加害車も右車庫に格納されていた。

(ニ) 被告会社の運転手は被告組合の前記配送センターに出勤してタイムカードに打刻し、また被告組合の指揮の下に貨物の配送を行なつていた。

(ホ) 右のとおり、被告組合は、加害車につき運行支配と運行利益とを有していたので、運行供用者として、自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」という。)第三条本文により本件事故に因つて生じた原告の損害を賠償すべき義務を負つた。

(2) 仮に、被告組合が加害車の運行供用者といえないとしても、右(ロ)ないし(ニ)の事実によると、被告組合は、被告福島を自己の指揮監督下に置いて運送業務に従事させていたということができ、然も本件事故は被告福島が被告組合の業務を執行するにつき発生させたものであるから、民法第七一五条により原告が被つた損害を賠償すべき義務を負つた。

4 被告三田稔

被告三田は、昭和四六年一一月一八日、原告に対して、本件事故に因り生じた損害を賠償することを約束した。

(三)  損害

1 逸失利益 一七一六万四三九八円

(1) 本件事故当時、原告は有限会社山崎食品(以下「山崎食品」という。)の富士ビル店店長として勤務し月額一〇万円の給与を得ていた。また、原告は農業をも営み、その耕作面積は八七アールであり、牛の飼育もしていた。昭和四六年度の右農業による収入は一五二万一六二四円であつたが、右収入を得るために要した経費は二六万六五一五円で、原告とともに右農業に従事した原告の妻の寄与率が一〇パーセントであつたから、結局、一一二万九、五九八円が原告の農業所得であつた。

(2) 原告は本件事故による傷害のため昭和四六年八月一七日より同年末まで全く稼働することができず山崎食品を欠勤したことによつて四五万円の得べかりし収入を失つた。

(3) 本件事故による傷害のため原告はその労働能力の四五パーセントを失つた。原告は昭和四七年一月現在、満三八歳であつて、なお二五年間は優に稼働し得るものであつたから、その間の右の労働能力の喪失に因る得べかりし収入の逸失額の、ホフマン式計算法による年五分の割合による中間利息を控除した現価を算出すると、別紙計算書1記載のとおり一六七一万四三九八円となる。

(4) よつて原告は、本件事故による傷害に因つて右(2)(3)の合計一七一六万四三九八円の得べかりし利益を失つた。

2 入院中の雑費 二万二〇〇〇円

3 慰藉料 三〇〇万円

原告は本件事故に因る受傷により五五日間入院し、その間に脾臓摘出手術を受けた。このため原告は現在に至るも全身倦怠があり甚大な精神的打撃を受けた。よつてこれに対する慰藉料としては三〇〇万円が相当である。

4 弁護士費用

(1) 昭和四七年(ワ)第二〇三号事件につき、一〇〇万円

(2) 昭和四九年(ワ)第三三三号事件につき、五〇万円

(四)  損害の填補

1 昭和四七年(ワ)第二〇三号事件

原告は、被告会社から五五万円、自動車損害賠償責任保険(以下「自賠責保険」という。)から一七三万円(後遺障害分一六八万円を含む。)の支払いを受けた。

2 昭和四九年(ワ)第三三三号事件

原告は、被告会社から七八万円、自賠責保険から一七八万円の支払いを受けた。

(五)  結論

よつて、原告は、本件事故に因る損害の賠償として被告福島、被告会社、被告組合各自に対して前記(三)の1ないし3、4(1)の合計額から前項1の填補額を控除した残額一八九〇万六三九八円およびこれに対する本件(昭和四七年(ワ)第二〇三号)訴状が被告組合、被告会社、被告福島に送達された後である昭和四七年五月五日から完済に至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを、被告三田に対して前記(三)の1ないし3、4(2)の合計額から前項2の填補額を控除した残額一八一二万六三九八円の内金五〇〇万円およびこれに対する本件(昭和四九年(ワ)第三三三号)訴状が被告三田に送還された翌日である昭和四九年七月一八日から完済に至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める。

二  請求原因に対する被告組合の答弁

(一)  請求原因(一)の6の事実は知らないが、同(一)のその余の事実はすべて認める。

(二)1  同(二)の1の事実は知らない。

2  同(二)の3の事実のうち、加害車が被告会社の所有であることは認めるが、その余の事実は否認する。

被告組合と被告会社との間には貨物の継続的運送契約は結ばれていたが、加害車或いは被告福島を自己の貨物を運送させるために専属的に使用していないし、被告会社に対して運送を依頼するに際し具体的な指揮監督を何らしていなかつたのである。

また被告組合は被告会社の依頼に応じ車庫を貸していたが、それは被告会社が被告組合の貨物を運送する便宜のために随時駐車使用することを認めていたに過ぎないものであり被告組合が加害車を保管していたという事実はない。

(三)  同(三)(四)1の事実はいずれも知らない。

三  請求原因に対する被告会社の答弁

(一)  請求原因(一)のうち1ないし4の事実はいずれも認めるが、5の事実は否認し、6の事実は知らない。

(二)  同(二)の2の事実は否認する。

(三)  同(三)の1ないし4の事実はすべて否認する。

原告主張の農業所得についてであるが、土地やその他の生産手段の寄与分を控除しなければならないし、原告が出稼ぎをしていたとすれば、農繁期以外は家族労働に頼つていたことになるから、農業所得に対する原告以外の家族の寄与分は大きい。

更に原告は本件事故当時山崎食品から月額一〇万円の給与の支払いを受けていたと主張するが、右主張は不当である。原告は、山崎食品に就職する前、農業と出稼ぎの大工をしており、商売の経験はなく、格別商才に長けていた訳でもなく、山崎食品の営業に関する知識経験も全く有していなかつた。原告は、山崎食品において、時々、各種の雑用(単純労務)をなし得る程度の技能しか有していなかつた。従つて、山崎食品が原告に対して月額一〇万円にも及ぶ給与を支払う合理的理由はないといわざるを得ない。

(四)  同(四)1の事実は認める。

四  請求原因に対する被告福島の答弁

(一)  請求原因(一)の事実はいずれも認める。

(二)  同(二)の1の事実は否認する。

被告福島に、日頃常に、仕事に着手する前に車両の点検を行つていたし、積荷の安全を確認した後に車両を発進させ運転していた。

(三)  同(三)の事実は否認する。

五  請求原因に対する被告三田の答弁

(一)  請求原因(一)のうち1ないし4の事実はいずれも認めるが、5の事実は否認し、6の事実は知らない。

(二)  同(二)4の事実は否認する。

(三)  同(三)の事実はすべて否認する。

(四)  同(四)2の事実は認める。

六  被告らの抗弁(但し、被告三田を除く。)

(一)  弁済

被告会社は、本件事故に因る損害の填補として、原告に対して合計七八万円の支払いをしている(昭和四六年八月一九日、同年九月一八日、同年同月三〇日の各日に五万円宛、同年一〇月一〇日に八万円、同年一一月三〇日に五万円、昭和四七年三月一三日に四五万円、その外に年月日不明であるが、五万円を弁済。)。

(二)  過失相殺

本件道路の車道部分は、加害車が走行していた片側が幅五メートルであつたが、原告はその真中あたり(本件道路の中央線から南へ二・五メートル寄つたところ)を歩行していたため、加害車の荷台の後部から転落した木枠に当つて負傷したのである。歩行者は、本来、危険を避けて道路の端を歩行すべきものであり、車両の運行の頻繁な道路の中央近くを歩行することは適切ではない。このように原告は歩行方法を誤つたのであり本件事故発生につき過失がある。

(三)  被告会社は、前記(一)のとおりの弁済をしたほかに、原告が前記光生病院に入、通院して治療を受けたことによる費用合計二八万七四一六円を支払つたが、本件事故の発生について原告にも過失がある以上、右の支払額の一部は他の損害の弁済に充当されるべきである。

七  抗弁に対する原告の答弁

(一)  抗弁(一)の事実は認める(但し、被告ら主張の弁済金七八万円の中には請求原因(四)1に記載の五五万円が含まれている。)。

(二)  同(二)は争う。

(三)  同(三)の事実のうち、被告会社がその主張のとおりの治療費の支払をしたことは認める。

第三証拠関係〔略〕

理由

一  本件事故の発生および原因

(一)  請求原因(一)の1ないし4の事実(本件事故発生の日時・場所、加害車、右運転者)については全当事者間に争いがない。

(二)  原告が本件道路を歩行中、加害車の荷台の後部の木枠がはずれて、原告の腹部にあたつたことは、原告と被告組合および被告福島との間では争いがなく、原告と被告会社および被告三田との間では、いずれも真正に作成されたことに争いのない甲第二号証の一ないし四、同第三ないし第五号証および原告本人尋問(第一回)、被告福島本人尋問の各結果によつてこれを認めることができる。

(三)  右(一)(二)の事実と前掲記の甲第二号証の一ないし四、同第三ないし第五号証および原告本人尋問(第一回)、被告福島本人尋問の各結果によれば次の事実が認められる。

1  本件道路は本件事故発生地点附近においては、東西の方向に直線状に通じていて勾配はなく、アスフアルト舗装されて、平坦で、その幅員は一三・八メートルで歩車道の区別がなく、その前側側端から約六・八メートルのところに中央線(以下「センターライン」という。)が表示されている。本件事故発生地点付近の本件道路北側にカバヤ食品株式会社の正門があり、その西側端の処に本件道路の横断歩道が設置されている。本件事故当時、本件事故発生地点附近の本件道路の南側端の幅約一・八メートルの部分には、車両が縦列に多数駐車していた。

2  被告福島は加害車(車幅一・九九五メートル、車長五・七〇メートル、車高二・〇六メートル)を時速約四〇キロメートルの速度で運転し、前記のとおり本件道路南側端に駐車車両があつたので、加害車の右側車輪がセンターラインにかかる状態で、本件道路南側車線を西進していたが、本件事故発生地点(岡山市下石井二丁目六番四六号先)にさしかかつた際、加害車の前記木枠がはずれて落下し、折からセンターラインから約三メートル南寄り、前記横断歩道西端から西方約三・五メートルの地点付近を東方に向つて歩行中の原告の腹部に当り、原告はその場に転倒した。

右のように認められ、原告本人(第一回)の供述のうち、原告は本件道路の南側に駐車していた車両のすぐそばを歩いていた旨の供述および原告は前記横断歩道から西へ約一〇メートル位離れたところで倒れた旨の供述は、前記認定にそう前掲記の甲第二号証の二および被告福島本人の供述に照らすと信用できず、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。

二  被告らの責任

(一)  被告福島の責任

1  前掲記の甲第四号証、同第五号証および被告福島本人尋問の結果によれば、昭和四六年八月一七日午前九時二〇分頃、被告福島は、岡山市大供表町所在の被告組合において、加害車の荷台の鋼鉄製扉の上部に取付けてある木製の補助枠(着脱が可能である。)のうち荷台右側の補助枠を倒してじやがいもの種いもの入つた袋を荷台に積み込んだ後、右補助枠を起してその両端の止め金具をかけたこと、右側の補助枠の後端に取付けられている金具と後部扉上に取付けてある補助枠の右端に取付けられている金具とが組になつて、止め金具として作用する構造になつていること、左、右および後部の補助枠にはいずれもその上部両端に、右の止め金具が一組となるように取付けてあり、更に下部には鋼鉄製扉の上に補助枠を取付けるための差込みの爪(蝶番の役目をも果す。)が三個取付けてあること、被告福島は前記の場所を発進してから本件事故現場に達するまで、舗装道路ばかりを走行し、その間の距離は一キロメートル余りであつたこと、および後部補助枠は最初右側だけがはずれて原告の腹部に当つた後路面に落下したこと、以上の事実が認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。

2  右認定事実と加害車が前記の場所を発進してから本件事故が発生するまでの間に補助枠の落下原因となるような特別な外部的衝撃等が作用する事態があつたことを認めるに足りる証拠は何もないことからすれば、被告福島が、種いもを加害車に積込んだ後、右側補助枠と後部補助枠とを固定する止め金具を確実にかけないままで加害車を発進させたため、走行による加害車の振動によつて、右止め金具がはずれ、これによつて後部補助枠の振動が増大されて、鋼鉄製後部扉への取付用の爪もはずれて、後部補助枠が落下するに至つたものと推認するのが相当である。

被告福島本人の供述のうちには、補助枠の止め金具をしつかりかけ、かつ点検も怠らなかつた旨の供述があるが、右1認定の事実(後部補助枠は右側部分が最初にはずれたこと)および前掲記の甲第二号証の四、同第四号証によると、補助枠に取付けてある止め金具は、確実にかけてあれば、特別な衝撃、振動等がない限り、走行によつて通常生じる衝撃、振動等によつては、はずれない構造になつていることが認められることに照らして考えると、たやすく信用できないし、他に右推認を覆すに足りる証拠はない。

3  してみると、被告福島は、貨物自動車運転手として、荷台補助枠の止め金具を確実にかけ且つ右金具による補助枠の固定状態を点検確認したうえで発進すべき注意義務があつたにも拘らず、これを怠つた過失により本件事故を生ぜしめたものであるから、民法第七〇九条により本件事故に因つて生じた原告の損害を賠償すべき義務を負つたものである。

(二)  被告会社の責任

前掲記の甲第四号証、被告福島本人尋問の結果によると、自動車による貨物運送を営業としている被告会社が、加害車をその営業のために使用していたことが認められ、右認定を妨げる証拠はないから、被告会社は加害車の運行供用者であつたということができる。してみると、被告会社は、自賠法第三条により本件事故に因つて生じた原告の損害を賠償すべき義務を負つたものである。

(三)  被告組合の責任

1  前掲記の甲第四号証、原告と被告組合との間では原本が存在し、右原本が真正に作成されたことに争いがない甲第六号証、いずれも原告と被告組合との間では被写体、撮影日が原告主張のとおりの写真であることにつき争いのない甲第七号証の一ないし五、いずれも被告組合が使用している伝票用紙であることに争いのない乙第一号証の一ないし五、証人暮石一男の証言によつて真正に作成されたと認められる乙第二号証、証人三田稔、同暮石一男、同和気久幸の各証言および被告福島本人尋問の結果によれば、次の事実が認められる。

(1) 本件事故は、被告組合の被告会社に対する依頼に基き、貨物の運送を行うために、被告福島が加害車を運転して岡山市大供表町所在の被告組合から岡山県経済農業協同組合連合会(以下単に「経済連」という。)へ行く途中で発生したものである。

(2) 被告会社は昭和三六、七年頃から継続的に被告組合の依頼に基き、被告組合、経済連の倉庫から被告組合の各支所への運送を主とする、被告組合の貨物の運送を行つていたものであり、昭和四六年八月一日、被告組合の事業部配送センター(岡山市泉田所在)の開設に伴い、被告組合と被告会社間で作成された覚書(甲第六号証)には、「岡山市農業協同組合(以下甲という)と岡機運輸有限会社(以下乙という)の間の傭車につき、下記条項を定めるものとする。1車両、乙は、甲の配送計画に基づき甲所有の貨物を運送するに必要な車両を甲へ差し向けるものとする。2運行指示、岡山市農業協同組合事業部に於いて行う。但し、場合により支所に関する業務で支所長が指示する場合もある。3運賃、別に定める運賃表による。但し、運賃の精算は月末締切翌月一〇日払とする。」との記載のほか、運送中に発生した事故の処理方法についての定め等が記載されており、右覚書に基いて、貨物の運送区間(発送場所と運送先)、重量、運送品により運賃が算出される新運賃表が作成された。右覚書の文言は被告組合が起案したものであるが、被告組合は、これによつて被告会社との間の従来からの貨物の運送についての契約関係(但し、運送によつて被告会社が受ける対価の点を除く)を変更しようとしたものではなかつた。

(3) 本件事故当時、被告会社の従業員のうち被告三田、同福島および清谷某の三名、被告会社保有の貨物自動車のうち三台が、概ね毎日(休日は除く)被告組合の貨物の運送に当つていたが、右の被告会社の従業員は必ずしも一日の全部を被告組合の貨物の運送のみに従事するとは限らず、他の荷主の運送に従事することもあり、被告組合の貨物の運送に使用される車両も特定されていたわけではなく、加害車も被告福島が専用していたが、被告組合の貨物の運送に専用されていたものではなかつた。

(4) 被告組合の前記配送センターの発足(昭和四六年八月一日)以降、被告会社の車両による被告組合の貨物の運送は、原則的には、毎朝右配送センターにおいて、被告組合の担当者から被告三田に対して、当日運送すべき貨物の品目、数量、運送区間等を記載した運送指図書(前掲記の乙第一号証の一)を一括して交付し、被告三田が右の各運送指図書記載の運送を行うべき被告会社の従業員、車両、運送の順序等を定め、これに従つて運送が行われていた。

(5) 本件事故当時、被告組合は、配送センター構内にある車庫の一部を被告会社に対して無償で使用させ、被告会社は右車庫に「岡機運輸有限会社車庫」と表示した看板を掲示していた。

(6) 本件事故当時、被告会社の従業員で被告組合の前記配送センターに直接出勤する者は、被告組合の従業員用に設置されたタイムレコーダーを使用して出勤時刻の打刻を行つて、被告会社の出勤簿の記録に代えていたが、被告組合がこれによつて右の被告会社従業員の出勤状態を確認するということはしていなかつた。

以上のように認められる。原告本人の供述(第二回)のうちには、本件事故当時、被告会社の従業員であつた清谷某から、同人が本件事故当時、被告組合の配送センターで、被告組合の従業員に代つて、電話による貨物配送の注文を直接受け、配送関係の伝票を切つたうえ、注文のあつた品物を配達していたということを聞いた旨の供述があるが、証人三田稔、同暮石一男、同和気久幸の各証言に照らすと、右供述の清谷某からの伝聞内容は信用できない。また、原告と被告福島、被告三田との間では真正に作成されたことに争いがなく、右の事実と被告福島本人の供述とによつて、原告と被告会社、被告組告との間においても、真正に作成されたと認められる甲第一七号証には、加害車について、被告会社の「所有する車で、同社が岡山市農協泉田事業部(岡山市泉田)へ運転手付の専属車として持込んでいる三台の内の一台で」との、前記(3)の認定に反する記載があるが、甲第一七号証が原告と被告会社、被告福島らとの示談交渉の過程で作成されたものであり、かつ実際に誰が記載したものであるか明らかでないことおよび前記認定に沿う証人三田稔、同暮石一男の各証言に照らすと、右掲記の記載文言の正確性にはいささか疑問があり、いまだ前記認定を覆すに足りない。他に前記各認定を覆すに足りる証拠はない。

2(1)  前記1の(2)認定のとおり、被告組合と被告会社間の覚書には、傭車、運行指示という文言が使用されているが、他方、右覚書に基いて作成された運賃表によると、被告会社が被告組合の貨物の運送を行うことによつて支払いを受ける対価は、運送した貨物の運送区間、重量、運送品によつて定まることとされ、被告組合の貨物の運送に従事した被告会社の従業員、車両の数、時間等が対価算出の要素とされる定めがあつたことを認めるに足りる証拠はないこと、前記1の(4)認定のとおり、被告組合の貨物の運送を行う被告会社の従業員、車両およびその順序は、毎日、被告会社の従業員である被告三田が決定するのを原則としていたことからすれば、被告会社が、被告組合の貨物を運送するについての契約関係は、運転手付自動車の傭車契約といわれるものではなく、貨物の運送の委託契約(請負契約)であるというべきであり、前記覚書記載の運行指示というのは、個個の具体的な運送の委託(注文)を意味するものと解するのが相当である。

(2)  前記1の(5)認定のとおり、被告組合がその車庫の一部を、被告会社に車庫として使用させていたが、右の事実から直ちに、被告組合が被告組合の貨物の運送に使用される被告会社の車両を管理していたということはできず、他に、被告組合がその貨物の運送に使用される被告会社の車両を管理していたといえるような事実を認めるに足りる証拠はない。

(3)  前記1の(3)、(6)認定のとおり、被告会社の従業員である被告福島ら三名が概ね毎日被告組合の貨物の運送に従事し、右の被告会社の従業員が、被告組合のタイムレコーダーを利用して、その出缺を記録していたが、右の事実から直ちに、被告組合がその貨物の運送に従事する被告会社の従業員に対して、運送業務の履行について直接指揮監督を行つていたということはできず、他に、被告組合が右の指揮監督を行つていたといえるような事実を認めるに足りる証拠はない。

(4)  してみると、被告会社は本件事故当時までに約一〇年位にわたつて継続的に被告組合から貨物の運送を請負い、被告福島は被告会社の従業員として、被告会社が請負つた被告組合の貨物の運送業務に、遅くとも昭和四六年八月一日以降継続的に従事していたものであり、本件事故は被告会社が被告組合から請負つた貨物の運送を行うために、被告福島が加害車を運転中に発生したものであるが、被告組合が加害車を運行の用に供していたということはできず、また被告福島が被告組合の被用者といえるような関係があつたともいえないから、本件事故に因る原告の損害について、被告組合が自賠法第三条、民法第七一五条に基いて賠償義務を負うということはできない。

(四)  被告三田の責任

前掲記の甲第一七号証には「11/2日加害者側代表者として三田稔を決定した。当日の出席者、被害者高橋鉄太郎、加害者側岡機運輸有限会社常務田淵慎一、営業課長三田稔、運転手福島成至。決定をみた理由<1>話合が多人数になると出席、連絡に支障をきたすため。<2>三田稔本人が事故を起した車が自分(内面では)の所有であり、自分が責任を持ちたいという申出によるものである。<3>岡機運輸常務が三田稔が決定した事項について連帯責任を持たれるという承認があつたからである。」との記載がある。

しかしながら、加害車が内面的には被告三田の所有であるということが、具体的にはどのような事実に基くものであるかを認めるに足りる証拠が何もないこと、前記認定のとおり、被告三田が被告組合の配送センターにおいて、毎日、被告組合から被告会社が委託を受ける貨物の運送を実際に行う運転手、車両、その順序等を決定していたことは認められるが、証人三田稔の証言のうちに、被告三田は被告会社の運転手たる従業員であつたもので、何も役職には就いていなかつた旨の証言があることを考え合わせると、右掲記の甲第一七号証の記載によつて、昭和四六年一一月二日、被告三田が被告会社および被告福島から、本件事故に因る原告の損害の賠償について原告と交渉する代理権を授与されたことを認めることはできるが、同日、被告三田が原告に対して、本件事故に因る原告の損害を賠償することを約束したことを認めるに充分であるとはいえない。

三  原告の傷害の程度

(一)  請求原因(一)6の事実(本件事故に因る原告の傷害の部位、光生病院に入通院した期間、脾臓摘出手術を受けたこと。)は、原告と被告福島との間では争いがなく、原告と被告会社との間では、前掲記の甲第三号証、原本が存在し、右原本が真正に作成されたことに争いのない甲第八号証、証人高橋誠子の証言および原告本人尋問(第一回)の結果によりこれを認めることができる。

(二)  前掲記の甲第八号証、証人高橋誠子、同山崎稔の各証言および原告本人尋問(第一回)の結果によると、原告には後遺症状として全身倦怠感、寒冷時の腹痛があり、長時間同じ姿勢を持続することおよび力仕事ができなくなつたこと、原告は昭和四七年一月から山崎食品に再度勤め始めたが、当初の二か月間位は体調が悪くて一週間に二日間位の割合で欠勤したこと、昭和四七年以降原告は全く農作業をしなくなつたこと、以上の各事実が認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。

(三)  右(一)、(二)の事実によると、原告の後遺障害は自賠法施行令別表の第八級に該当すると考えられる。

四  損害

(一)  逸失利益

1  いずれも原告本人(第一回)の供述によつて真正に作成されたと認められる甲第一一ないし第一三号証、同第一六号証、いずれも証人高橋誠子の証言によつて真正に作成されたと認められる甲第一四、第一五号証、いずれも真正に作成されたことに争いのない丙第二号証の一、二証人高橋誠子、同山崎稔の各証言、原告本人尋問(第一回)の結果、自動車損害賠償責任保険岡山調査事務所、岡山県勝田郡勝北町に対する調査嘱託の各結果によると、次の事実が認められる。

(1) 原告は本件事故当時満三八歳(昭和八年二月七日生)で、妻高橋誠子(以下「誠子」という)とともに田約八反七畝、畑約一反余を耕作し、昭和四六年度は田のうち約四反七畝で米、約四反で藺草を、畑では主として牛の飼料を作り、原告の家族合計六人(原告夫婦、子二人、原告の両親)の自家用米約二〇俵分位および米九俵の売渡代金七万五三三九円、藺草の売渡代金一〇三万二四〇〇円、子牛の売渡代金一一万四六一〇円を得たほか、田四反の昭和四六年度の休耕奨励金一三万四六一四円の支給を受けた。右の米、藺草等を生産するために肥料代三万七四〇五円、燃料油代八〇〇〇円ないし九〇〇〇円位、原告が本件事故による受傷によつて稼働できなかつたことによる、原告に代る雇人の賃金を含む労務賃金一五万七〇〇〇円ないし一五万八〇〇〇円位を支出した。

(2) 原告は、昭和三〇年頃から毎年、春、秋の農繁期以外には出稼ぎに出ていたが、親類の山崎稔が経営する山崎食品に、昭和四六年五月中旬頃から見習いとして勤務し、同年七月一日から、給与月額一〇万円、春、秋の農繁期にそれぞれ約一か月勤務を休むが、その間も給与の支払いを受けるかわり、賞与は支給されない、という約束で、富士ビル店店長として勤務していたもので、同年七月分一〇万円、八月分(本件事故までの勤務に対する分)五万円の給与の支払いを受けたが、本件事故のため欠勤した本件事故から同年一二月末までの分については、全く給与の支払いを受けなかつた。

(3) 原告は、昭和四三年度、昭和四四年度については所得額の申告をしておらず、昭和四五年度については総所得金額を一六万三五〇〇円として申告していた。

(4) 誠子は昭和四五年一月から赤井敷物有限会社の勝北町安井所在の工場に勤務し、同年一月から一二月までに合計二七万六九五四円の給与の支払いを受けた。

右のように認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。

2(1)  前記1の(1)認定の米、藺草の売渡代金の合計は一一〇万七七三九円であるが、これに自家用米の価格を売渡米と同等とみて、その約二〇俵分の価格約一六万七〇〇〇円を加算すると、原告らが昭和四六年中に生産した米、藺草の価格の合計は約一二七万四〇〇〇円となり、これから前記認定の肥料代、燃料油代、労務賃を差引くと約一〇七万円となるが、米、藺草の生産には前記認定の費用のほかに、農機具の購入、維持費、農薬代等を要することが明らかである反面、前記認定の労務賃には、原告が本件事故による受傷によつて稼働できなかつたことによる、原告に代る雇人の賃金が含まれていることも考え合わせると、原告らの昭和四六年の米、藺草の生産による収益(自家用米の評価額を含む)は、本件事故がなかつたとした場合(原告に代る雇人の賃金を支出する必要がなかつた場合)、少くとも一〇〇万円はあつたものと認められる。原告らが昭和四六年中に子牛の売渡代金一一万四六一〇円を得ていることは前記1の(1)認定のとおりであるが、右子牛の入手価格、飼育期間等を認めるに足りる証拠が何もない以上、右の売渡による昭和四六年中における原告らの収益が何程であつたかを認定することはできない。前記1の(3)認定事実は、原告本人(第一回)の、昭和四五年度の申告所得額には藺草の売渡しによる所得は含まれていない旨の供述および社会一般における所得申告の実情を考え合わせると、昭和四六年度における原告らの農業による収益が一〇〇万円あつたと認めることを妨げるに足りない。

(2)  原告らの昭和四六年度の農業による収益一〇〇万円のうち、土地の収益率を二割、原告と誠子の各労働の寄与率を、原告を六、誠子を四とみるのが相当と考えられるので、原告の労働による収益は四八万円となる。証人高橋誠子の証言のうちには、同人は農業を一割程度手伝つていたに過ぎない旨の証言があるが、右証言は、前記のとおり原告は農繁期以外は出稼ぎに出ていたことが認められること、誠子の工場勤務は、前記1の(4)認定の給与額からすれば、誠子にとつても副業的なものであつたと推認されることに照らして考えると、たやすく信用できない。

(3)  原告が昭和四六年度の休耕奨励金一三万四六一四円の支給を受けたことは前記1の(1)認定のとおりであるが、休耕奨励金が原告の労働による収益でないことは明らかであるから、本件事故による原告の労働能力の減少に因る損害の算定には無関係なものである。

3(1)  前記三の(一)、(二)、四の(一)の1の(2)の各事実によると、原告は本件事故による受傷によつて、本件事故当日から昭和四六年一二月末まで山崎食品に勤務できなかつたことに因つて、得べかりし給与四五万円を失つたということができる。

(2)  昭和四七年一月現在、原告が満三八歳であり、その平均余命が三五・二三年であることからすれば、昭和四七年一月以降の原告の残存就労可能年数は、原告主張のとおり二五年はあるということができる。前記三認定の原告の後遺障害の程度からすると、これによる原告の労働能力の喪失率は、右の残存就労可能期間の全期間を通じて四五パーセントとみるのが相当である。

前記認定の原告の昭和四六年度の農業労働による収益四八万円、本件事故当時の山崎食品の勤務労働による収入月額一〇万円(年収一二〇万円)を基礎とし、かつ満五六歳以降は勤務労働による収入はそれまでの七〇パーセントに減少するものとして、原告の右の労働能力喪失率による二五年間の逸失利益の、ライプニツツ式による年五分の割合による中間利息を控除した昭和四七年一月一日現在の現価を算出すると、別紙計算書2記載のとおり一〇一九万八一六四円となる。

(二)  入院雑費 二万二〇〇〇円

前記三認定の原告の傷害の程度および入院期間(五五日)からすると、入院雑費として少なくとも一日当り四〇〇円合計二万二〇〇〇円を要したものと推認される。

(三)  慰藉料 一五〇万円

本件事故に因つて原告が受けた傷害及び後遺障害の部位、程度、治療のための人、通院期間その他諸般の事情を考慮すると、原告に対する慰藉料としては、一五〇万円をもつて相当と認める。

五  過失相殺の主張について

前記一の(三)認定の、加害車の車幅、加害車が本件道路上を走行していた位置および原告が転倒した位置を合わせて考えると、本件事故発生直前、加害車と原告との間隔は約一メートル位はあつたものと推認される。そして原告が本件事故発生地点付近において東方に向つて歩行中であつたことも前記1の(三)認定のとおりであるが、原告がいかなる時点から、本件道路の南側端に駐車していた車両の北側のセンターライン寄りの部分を東進歩行し始めたかは明らかでない(前掲記の甲第三号証には、加害車が前から走つて来た旨の原告の供述の記載があり、原告本人の供述(第一回)のうちにも同趣旨の部分があるが、他方、前掲記の甲第四号証には、補助枠が落下するより前には、原告を認めていない旨の被告福島の供述の記載および被告福島本人の誤違のうちには、本件事故後、原告から、本件道路を横断しようとしていて本件事故に遭遇したときいた旨の供述があつて、他に、右の各供述の記載、供述のうちいずれが事実に沿うものであるかを判定するに足りる証拠はない)。

そして、仮に、原告が加害車と対面、行違うような状態で本件道路の前記の部分を東方に向つて歩行して来たものであるとしても、加害車と原告との間には約一メートルの間隔があつたのであるから、本件道路に歩車道の区別がなく、かつ本件事故当時、本件道路の南側端には多数の車両が縦列に駐車していたという事情をも考え合せると、原告は加害者との衝突・接触を防止するに充分な間隔を保つていたものといえる。前記認定の本件道路のセンターラインより南側の部分の幅員からすれば、原告は本件道路のもつと南側寄り(約一・五メートル位)の部分を歩行することが可能であつたといえるが、歩行者が車両と行違う場合に、車両の積載貨物が落下したり、車体取付装置が離脱することがあることをも慮つて、車両との間隔を保つべき注意義務はないものというべきであり、かつ加害車との間隔を右の程度広く保つことが可能であつたということは、過失相殺の事由となる不注意があつたというに足りず、他に、歩行者である原告に特段の不注意があつたと認めるに足る証拠はないので、被告らの過失相殺の主張は採用できない。

六  損害の填補

原告が被告会社から七八万円、自賠責保険から一七三万円合計二五一万円の支払いを受けたことについては、原告と被告会社および被告福島との間に争いがない。

してみると、右の支払いによつて、原告の被告会社および被告福島に対する損害賠償請求権の残額は、前記四の(一)の3の(1)、(2)、同(二)、(三)の合計額一〇八二万〇一六四円から二五一万円を控除した八三一万〇一六四円となつたことになる。

七  弁護士費用

右の原告の被告会社および被告福島に対する損害賠償請求権の残存額からすれば、原告の本件訴訟の委任による弁護士費用として、被告会社および被告福島に対して請求しうべき分は八〇万円をもつて相当と認める。

八  結論

以上のとおりであるから、原告の各被告に対する本訴請求のうち、被告会社、被告福島に対する請求は、九一一万〇一六四円およびこのうち八三一万〇一六四円に対する右損害発生の後である昭和四七年五月五日から、八〇万円に対するこの判決言渡しの日の翌日から、完済に至るまでいずれも民事法定利率年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度においては理由があるからこれを認容し、被告会社、被告福島に対するその余の請求並びに被告組合、被告三田に対する請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条、第九二条、第九三条を、仮執行の宣言につき同法第一九六条をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 寺井忠 高山浩平 竹原俊一)

計算書

1 (1,129,598円+1,200,000円)×0.45×15.944=16,714,398円

2 (1)満55歳までの17年間の逸失利益

(480,000円+1,200,000円)×0.45×11.2740=8,523,144円

(2)満56歳以後8年間の逸失利益

(480,000円+1,200,000円×0.7)×0.45×(14.0939-11.2740)=1,675,020円

(1)+(2)

8,523,144円+1,675,020円=10,198,164円

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